藤田嗣治(ふじたつぐはる)の名前を、聞いたことはありますか?
20世紀に活躍した、世界的に有名な日本人画家です。
「没後50年 藤田嗣治展」が、上野にある東京都美術館で開催されていて、私はこの8月に行ってきました。
できればもう1回足を運びたいと思っているくらい、惚れ込んでいるのに、今までこのブログにレビューを書くことをためらっていました。
なぜって、藤田嗣治の絵画は、現在も著作権で守られているから。
本当なら絵画も掲載してレビューを書きたいところですが、それが気軽にできないので、あれこれ迷っていました。
うーん、でも、もし仮に絵画を載せられたとしても、彼の絵の魅力は半分も伝えきれない自信があります。
それぐらい、繊細。
生の絵画を観なければ、絶対にその良さは体感できません。
(藤田嗣治の作品に限らず、どんな絵でもそうなのですが)
もちろん、私の文章力でも表現しきれないのは百も承知なのですが、そろそろ会期終了の日が迫ってきているので、思い切ってレビューを書くことにしました。
「おっ、なんか面白そう」と、少しでも興味を持っていただけると、とっても嬉しいです。
藤田嗣治ってどんな画家?波乱万丈な生涯について
パブリック・ドメイン viaウィキメディア・コモンズ
まずは、簡単なプロフィールをご紹介。
藤田嗣治は1886年に東京で生まれました。
26歳のときにフランスに留学。パリで有名な画家になりました。
「乳白色の肌」と呼ばれた裸婦像は、彼にしか描けない傑作です。
(今回の展覧会では、10点以上の裸婦像が集結しています)
46歳のときに日本に帰国。しかし数年後に、日中戦争や第二次世界大戦の影が濃くなり、陸軍から作戦記録画(戦争画)を描くように求められます。
(作戦記録画も、展覧会で観ることができます)
そして終戦。戦争協力者として批判を浴び、スケープゴートにされて、62歳のときに日本を離れました。
再びパリに戻り、フランス国籍を取得。日本に二度と戻ることはありませんでした。
「私が日本を捨てたのではない、日本に捨てられたのだよ」と、彼はよく語っていたそうです。
81歳で亡くなるまで、彼は数多くの絵を描き続けました。
藤田嗣治はカメレオンでエトランゼ?稀有な個性について
私にとって藤田嗣治は、カメレオン画家というイメージがあります。
(もちろん、誉め言葉です)
今、カメレオン俳優が流行っているけれど、まさにそんな感じ。舞台に合わせて、七変化する画家。
日本やフランスに限らず、世界中を旅して回っているのですが、行く先々で現地の空気に溶け込んで、現地の風合いを絵にしているんですよね。
44歳くらいのときに、南アメリカを旅していたときは、コテコテに熱い絵を描いていました。
パリにいたときの、クールな作風からは想像できないくらい。
とても器用な人だったんじゃないかな。
ところが、日本にいてもフランスにいても、どこの国にいても、エトランゼであり続けたのではないかと思います。つまり、異邦人です。
秋田や沖縄を描いている作品もあるのですが、どこかエキゾチックです。
「カメレオンで、エトランゼ」
こんな稀有な個性の持ち主は、私は藤田嗣治しか知りません。
藤田嗣治の日本人としてのルーツ
藤田嗣治が抱えていた孤独感は、想像を絶するものがあります。
でも、今回の展覧会を観て、気づいたことがありました。
それは、彼が日本人としてのルーツを、とても大切にしていたということ。
私は、世界に日本人としていきたいと願ふ、
それはまた、
世界人として日本に生きることにも
なるだらうと思ふ。引用元:藤田嗣治「随筆集、池を泳ぐ」(1942年)
フランスに留学して、パリの画壇に挑むとき、彼が手にした武器は日本画で使うような面相筆でした。
彼は日本画の技法を油彩画に取り入れつつ、乳白色の肌を描く独自の技法を生み出したことで、世界的に活躍する画家になりました。
若いころに描いた絵をよく観ると、ほとんどの作品に「嗣治」と日本語で署名されているんですよね。私はそれを見て、思わず胸が熱くなりました。
どこに行っても孤独を感じることがあったら、まずは自分の足元を見つめて、ルーツにつながってみようと思いました。
故郷の空、懐かしい家族、子どものころから好きだったもの、等々……
【まとめ】没後50年藤田嗣治展の感想
「没後50年 藤田嗣治展」の感想をお伝えしました。
いかがでしたでしょうか。
《五人の裸婦》1923年
《闘争(猫)》1940年
《私の夢》1947年
《カフェ》1949年
これらの絵が、特にお気に入り。
あとやっぱり、数多描かれた《自画像》も好きです。
最初にも予告したとおり、彼の絵の良さは言葉では説明しきれません。
もし機会があれば、ぜひその目で確かめて欲しい内容です。
(東京都美術館では2018年10月8日まで。その後、京都国立近代美術館で10月19日から2月16日まで開催予定です)
※ところで、この頃自然災害が多いですね。
台風21号と北海道地震に被災された方は、ご無事でしょうか。
一日も早い復旧を願ってやみません。
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