「こころの処方箋」から学ぶ、ひとりでも心が楽になる言葉

40代で独身でいると、結婚している人から、こんなことを言われることがあります。

「一人暮らしで、寂しくない?」
「ずっと独りでいないで、誰かいい人探したら?」

相手の方がいかにも幸せそうにしていると、ついムッとして、

「ひとりでも楽しいから平気ですよ」

と、見栄を張ってしまうこともあります。

確かにひとりは楽しいけれど、何でこんなにムッとしてしまったんだろうと、後悔することも。

あなたもこんな経験、ありませんか?

そんなときにお勧めしたい本を、今日は紹介します。

河合隼雄さんによる名エッセイ集、「こころの処方箋」です。

「こころの処方箋」について

「こころの処方箋」には55のエッセイが収められています。

各章のタイトルは「人のこころなどわかるはずがない」「ふたつよいことさてないものよ」という風に、格言風にまとめられています。

目次を開いて、各章のタイトルを見てみても、押しつけがましい言葉はなく、心にすっと染み入るものばかり。エッセイも読んでいて肩の力がふっと楽になります。

私は大学生の時に、ゼミの先生から勧められて、河合隼雄さんの本を読むようになりました。その最初の一冊が、このエッセイです。

学生の頃も楽しく読みましたが、社会人になって悩んだり、困ったりしたときに、この本をちょくちょく思い出すようになりました。歳を重ねるにつれて、ジワジワとその良さがわかってくるような本です。

「一人だから自由でいい」という強がり

今日紹介するのは、「一人でも二人、二人でも一人で生きるつもり」というエッセイです。

一部、 引用しますね。

一人でも落ち着いて楽しく過ごしている人もある。もっとも一人で楽しくと言っても、一人だから自由でいいとか、好きでもない人と一緒にいる人の気持ちがわからないとか、何のかのと言いながら、一人で楽しみを追いかけまわしたり、一人の楽しさをみせびらかして生きているような人もあるが、そんなのは偽物であることが多い。本当に楽しい人は、もう少し静かである。一人でも結構楽しいのだから、何のかのと他人をわずらわす必要がない。一人の楽しさを多くの人に見せつけている人は、本当の一人になったとき、それに見合うだけの税金として、相当な涙を流して居られると考えていいだろう。

引用元:こころの処方箋(河合隼雄 著)

「一人だから自由でいい」

独身の人なら、ぽろっと零してしまっても、おかしくない言葉ですよね。

私も最初に書いた通り、誰かの言葉を受けて、ついつい言ってしまうことがあります。

でも、度を越して、強がってしまうことはないでしょうか?

・独身生活の気軽さを無理にアピールする
・SNSを通して、楽しくないことも、楽しそうに見せびらかす

これはかえって、自分の首を絞めることになりますよね。

それもまたひとつの生き方なので、別によしあしは論じることもないが、ただ羨ましがる必要のないことは事実である。

引用元:こころの処方箋(河合隼雄 著)

多少見栄を張ってしまうのは、良いことでも悪いことでもありません。

ただ、河合隼雄さんも仰っている通り、「誰かを羨ましがる必要はない」と知っているだけでも、心が楽になるのではないかと思います。

おひとりさまは、がんばりやさん。

30~50代くらいの「おひとりさま」は、一人で何でもがんばっている人ばかりです。

一人で働いて、家事もこなして、家賃も支払って、なかには一戸建てやマンションを購入している人もいると思います。

(なんらかの事情で無職だとしても、誰も頼る人がいなくて、歯を食いしばっているかもしれません)

「おひとりさま」は、誰も見ていないところで、努力をしている人が多いです。

ただ、その努力に対して、

「がんばっているね」

と、声をかけて、受け入れてくれる人がいません。

そこが「おひとりさま」の、寂しいところでもあります。

「羨ましがられたい」は、「羨ましい」の裏返し。

自分ががんばっていることに対して、誰かに声をかけてほしいと願うこと自体は、おかしなことでも何でもないと思います。

とは言っても、見栄を張ってしまうと、ますます寂しさを募らせることになりますよね。

「独身で寂しくないの?」と、心ないことを言う人に対しても、寂しくないフリをしていたら、悪循環に陥ってしまうかもしれません。

「他人から羨ましがられたい」と思うのは、「本当は他人が羨ましい」という感情の裏返し。

「誰かを羨ましがる必要はない」

そのことを知っているだけでも、気持ちが楽になるのではないでしょうか。

誰かに「いいね」と言ってもらうよりも、まずは自分に「いいね」と言ってあげられるといいですね。

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