共感と驚異―せきしろ×又吉直樹「カキフライが無いなら来なかった」

「一人暮らしをしていると、家ではあまり笑わない」という人、多いのではないでしょうか。

テレビでお笑い番組を観ていても、自分の笑い声だけがシンとした部屋に響いて、ふと切なくなる時もあるかもしれませんね。

そんな孤独を感じているときに、おすすめの本があります。

「カキフライが無いなら来なかった」です。

この本は、文筆家のせきしろさんと、芸人で芥川賞作家でもある又吉直樹さんの共著。自由律俳句集で、散文写真も収められています。

笑える句が多いですが、押しつけがましいものはなく、想像力をかきたてられるものばかり。

他にも、寂しさや切なさや懐かしさなど、さまざまな感情が詠み込まれていて、思わず膝を打ちそうなほど共感してしまいます。

どの句も捨てがたいけれど、いくつか選んで紹介したいと思います。

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自由律俳句とは?

まずはその前に、「自由律俳句とは何?」という疑問にお答えししますね。

自由律俳句とは、五七五の定型のリズムや、季語や切字を入れるルールにとらわれないで、自由に詠んだ俳句のこと。種田山頭火尾崎放哉の句が、特に有名です。

種田山頭火

まつすぐな道でさみしい
分け入つても分け入つても青い山

尾崎放哉

咳をしても一人
いれものがない両手でうける

ね?孤独感がすっと伝わるような、名句だと思いませんか?

せきしろさんや又吉直樹さんの自由律俳句も、山頭火や放哉にも通ずる良さがあると思います。

せきしろさん×又吉直樹さんの自由律俳句

カキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫)

さて、お待ちかね。

せきしろさんと又吉直樹さんの句を紹介します。

数多くなってしまったので、ちょっと強引にカテゴライズしてみました。

※以下、(せ)=せきしろさん、(又)又吉直樹さん。

お笑い・ツボにはまる系

何だかよく分からないけれど、クスッと笑いを誘ったり、ツボを刺激するような句です。

(せ)

すまないが狐の影絵しかできない

始発電車に眠る人と眠れぬ人と登山者

よく知らない人だけど髪切ったのは一目瞭然

食品サンプルかどうか指で押した

鳥になりたいとはさほど思わずに歌う

(又)

ほめられたことをもう一度できない

登山服の老夫婦に席を譲っても良いか迷う

今の総理大臣は駄目だとか言ってみる

トラックの後ろに乗りたくないと言えば嘘になる

遅刻が確定した電車で読書

一人暮らし・あるある系

この本には、一人暮らし経験者なら特に共感できそうな句が多いです。

(一人暮らししたことなくても、頷いてしまうかも……)

(せ)

雨と冷蔵庫の音に挟まれ寝る

ひとりになって玄関が広い

醤油差しを倒すまでは幸せだった

こんなにも時計の音がきこえていたのか

(又)

電気のヒモが長ければと布団で思う

ロフトは絶対条件と言ってた頃

これも頑張れば燃えるゴミだろう

ごま油に賭けてみないか

恋愛・胸キュン系

甘酸っぱい気持ちが込み上げて、胸がキュンとする句もあります。

(せ)

喧嘩しながら二人乗りしている

握った手が冷たくてキミはすまなそうな顔をした

独り言にならないようにと居てくれた人

(又)

改札に君が見えるまで音楽を聴く

アドレスを消しに景色の良い所まで来てしまった

会えなかったから自転車でもう一度通った

* * *

あと、ここにはあえて引用しませんが、又吉直樹さんの最後の一句がとても印象的です。

この句があるから、希望をもって本の余韻に浸ることができます。

ありそうでなかった。共感と驚異の自由律俳句。

せきしろさんと又吉直樹さんの自由律俳句を紹介しました。

ところで、二人の俳句はどうしてこんなに面白いのだろうと考えた時、ふと思い出した言葉がありました。この本の帯文を書かれている穂村弘さんの言葉です。

短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それは共感と驚異である。

共感とはシンパシーの感覚。「そういうことってある」「その気持ちわかる」と読者に思わせる力である。

共感=シンパシーの感覚に対して、驚異=ワンダーの感覚とは、「いままでみたこともない」「なんて不思議なんだ」という驚きを読者に与えるものである。

引用元:短歌という爆弾(穂村弘 著)

短歌と自由律俳句の違いはありますが、お二人の俳句にも「共感」と「驚異」の要素が絶妙に含まれていると思います。

「こんな情景あるある」と共感させておいて、「この情景をこの言葉であらわすなんて!」と驚異をもたらす。ありそうでなかった言葉が、雨あられのように連打しているのが、この本の凄みです。

醤油差しを倒したり、電気のヒモが長ければと布団で思ったり、等々……誰もが身に覚えがあることだけど、まさかそれが自由律俳句になるなんてビックリしますよね。

この「共感」と「驚異」の要素があるからこそ、時に笑えたり、時に切なくなったりして、心が揺さぶられるのでしょう。

お笑いだけでなく、静かな感動を求めているあなたにも、おすすめしたい一冊です。

 

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コメント

  1. うめ子 より:

    こんばんは~

    マホさんのブログ、文章もデザインもすごく素敵ですね~。
    自分のブログに帰るのが嫌になります。
    もしかしてマホさんは、プロの方ですか?めちゃくちゃ回遊してしまいました!

    「カキフライが無いなら来なかった」、気になってたんです。
    「火花」を読んだんですけど、ちょっと泣いてしまったので、
    又吉どうなんかなぁ?もう1冊ぐらい読んでみたいなぁと思ってました。
    俳句の本って難しそうで読んだことないんですが、これは取っつき易そうですね~

    マホさん、たくさん本読まれててスゴイです。
    レビューどれもとても参考になりました。
    私が知らない本ばかりだから余計面白かったです。
    またお邪魔します~

    • maho より:

      うめ子さん、こんばんは~

      ブログに来てくださって、うれしいです!ありがとうございます!
      私はプロじゃないですよ。ド素人です^^

      「火花」は私も読みました。泣けますよね。
      「カキフライが無いなら来なかった」は、俳句といっても自由律俳句なので、難しくありません。
      大喜利みたいな感覚で読めると思います。

      あと、又吉さんの作品でお勧めするとしたら、やっぱり「劇場」かな……。
      私は「火花」以上に、「劇場」が胸に迫りました。

      うめ子さんがブログで紹介している本も、
      私が知らない本ばかりだけど、面白そうだなってホント思います。

      またお時間のあるときに、気楽に遊びに来てくださいね♪