「あなたには帰る家がある」の感想。原作も驚くほど面白いですよ。

2018年4月から、TBS系の金曜ドラマで、「あなたには帰る家がある」の放送がはじまります。

原作は直木賞作家の山本文緒さんが、1994年に発表した作品。

山本さんの著書を20冊近く持っていて、大ファンの私としては、ぜひ原作の感想を書きたいと思いました。

タイトルからも想像できる通り、不倫の物語ですが、それだけでは終わらず、さまざまなことを考えさせられます。なによりも、グイグイと引きつけていくような面白さがあります。

「不倫には縁がない」という人が読んだとしても、楽しめるのではないでしょうか。

「あなたには帰る家がある」小説のあらすじ

あなたには帰る家がある (角川文庫)

佐藤真弓は、年下の夫・秀明と、もうすぐ1歳になる娘・麗奈と暮らしている専業主婦。家に縛られている毎日に疑問を抱き、保険のセールスレディーの仕事をはじめます。

ところが、秀明は真弓に非協力的。互いに不満をつのらせて、すれ違うように。

そんな中、秀明が働く住宅会社のモデルハウスに、茄子田一家が見学に来ます。
(夫・太郎、妻・綾子)

真弓と正反対で家庭的な綾子に、秀明は惹かれます。

綾子もまた、優しい秀明との出会いに運命的なものを感じます。

そんな秀明と綾子が、ふとしたことで関係を持ってしまうことに……

夫は花になど興味がないが、秀明は「紫陽花の花が咲き始めましたね」と言ってくれた。平凡な家庭の主婦・綾子が恋をしたのは、そんな理由からだったかもしれない。そして秀明が恋に落ちたのも、仕事を持つ妻にはない、夕餉の支度をする幸福そうな綾子の姿を見たからなのかもしれない。妻の恋、夫の恋をきっかけに浮き彫りにされるそれぞれの家庭の事情―。「結婚」の意味を問う、恋愛長編小説。

男が外で働き、女が家を守るのは、幸せなこと?

物語の最初では、夫の秀明が外で働き、妻の真弓が家を守っています。

「男が外で働き、女が家を守る」

この構図は、多くの場面で見られるものですね。

それは家庭だけに限った話ではありません。会社で男が営業に出て、女がお茶くみにコーピー取りをするといったケースも、同じようなものです。

「男は男らしく」
「女は女らしく」

この構図に従っていれば、誰もが幸せになれるのでしょうか?

その疑問に大きな一石を投じたのが、「あなたには帰る家がある」だと思います。

登場人物の真弓は、外へ働きに出て、どんどんと逞しくなっていきます。

最初に出てきたときは、とんでもなく我がままで、「家事が嫌だから働きに行っちゃうの?」と、ハラハラしながら読みました。ところが、だんだんと真弓が成長するにつれて、「我がままも強み」と思えるまでになりました。

それとは反対に、家庭的な綾子は不倫をして、徐々に心のバランスを崩していきます。

人(特に男性)に依存して頼らなければ生きていけない、弱さがあるからかもしれませんね。最後は見ていて、痛々しくなるほどでした。

もちろん、「女性は社会に出た方がいい」とか、「女性が家にいるのはだめ」と、単純に言い切るつもりは、全くありません。

幸せには、正解はありません。

作者の山本さんは、善くもなければ悪くもない、そんな普通の人たちの心を、怖いほどリアルに描いています。ときに突き放すように。ときに救いの手を差し出すように。

特に男性の心理描写の生々しさには驚かされます。女性作家なのに、なんでここまで描けるのか不思議なくらいです。

そんな登場人物たちの心を、かいま見るうちに、「男性とは?」「女性とは?」「仕事とは?」……と、さまざまなことを深く考えさせられるのが、この本の魅力だと思います。

ドラマをきっかけに、一人でも多くの人が原作に興味をもってくれたら嬉しいです。

※山本文緒さんのエッセイ「そして私は一人になった」の感想も、こちらの記事に書いています。

「そして私は一人になった」は時を超えて心に響く日記エッセイ

ひとり暮らしのなかで感じる寂しさや嬉しさが、心地よく描かれています。おひとりさまエッセイを探している方はぜひ。

コメント

  1. もも より:

    はじめまして。ブログ時々拝見してます。
    札幌在住の独身OL、実家暮らし45歳です。
    私も山本文緒さんの作品が好きなので、
    ドラマ化はとても楽しみです。

    今後ともよろしくお願いします。

  2. マホmaho より:

    ももさん

    はじめまして。
    コメントありがとうございます!
    ブログもご覧くださって、嬉しいです。

    ももさんも山本文緒さんの作品、お好きなんですね。
    面白いですよね。

    こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。