「そして私は一人になった」は時を超えて心に響く日記エッセイ

今日はお気に入りの本を一冊紹介します。

山本文緒さんによる日記エッセイ「そして私は一人になった」です。

内容としては、山本さんが一人暮らしをしている日常を、一年間にわたって綴ったもの。

私は家族と暮らしているときにこれを読んで、「私も一人暮らしをしたい」と思い立ちました。人生を後押しした、大事な一冊です。

そして一人暮らしをして10年経とうとしている時に、久々に本書を読んでみました。

「そして私は一人になった」は日記エッセイ

本書は1996年の日記です。

(文庫版は2000年4月の日記も追記されています)

思えば20年以上前の日記なのに、古臭さを全く感じません。

20世紀から21世紀になった今、40代になってしまった自分が読んでも、すとんと心に響きます。

とは言っても、1996年当時の匂いは感じるんですよね。

アトランタオリンピックが開催され、「SMAP×SMAP」が放送され、貴乃花が現役の横綱だった時代です。

山本さんの筆によって、SMAPや貴乃花についてサラッと書かれている文を読んで、時代の流れというのを実感しました。

一人暮らし経験者なら誰もが共感しそうな言葉

では、山本さんの日記のどこが、新鮮に感じられるのか。

一人暮らしをしているなかで、喜んだり、淋しがったり、悩んだりしているツボが、今の私にも通じるものがあるからです。

このエッセイに共感するのは、きっと私だけではないはず。

一人暮らしをしている人なら、誰でも思い当たることばかりです。

一人でいる気楽さや孤独感なんて、一人でずっといる故に、なかなか言葉にされないんですよね。自分でも気づかないまま、心の奥底に埋もれてしまった感情が、どれだけあることか。

そんな感情に、スポットライトを当ててくれたのが本書。

「そうそう!こういうことを言いたかったの!」

まるで自分の気持ちを代弁してくれるような友達に、ようやく出会えたような嬉しさです。

しかも山本さんは、等身大でありのままの自分を、日記に書いています。

大きく波風を立てるような事件はなく、淡々としているのですが、それが読んでいて心地いいです。

淋しいことはつらいことでもあるし、嬉しいことでもある。

最後に本書から引用しますね。

一人暮らし歴の長い方にはちゃんちゃらおかしい話かもしれませんが、やっぱり一人で生活するのは淋しいです。それが実感です。

けれど、淋しいことが時には本当につらくても、淋しいことが嬉しい時も多いです。

いつかまた、新しい煩わしさに入っていきたいと望む日もくるかもしれません。

でも今は、誰とも口をきかず一日中本を読んだり、ぼんやりと日に当たったり、時には淋しさに耐えられず友人に電話をしたりもする毎日に、満足しています。

そうなんですよね。

淋しいことはつらいことでもあるし、嬉しいことでもあるんですよね。

私の一人暮らし歴も長くなってしまいましたが、ちゃんちゃらおかしいとは思いません。

では、何がつらくて、何が嬉しいのか。

興味があれば、ぜひ本書で続きを確かめてみてくださいね。

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